新型コロナウイルス感染予防における視覚障害者の手引き誘導のガイドライン
新型コロナウイルス(COVID-19)感染予防における視覚障害者の手引き誘導のガイドライン
2020年8月7日
日本歩行訓練士会
新型コロナウイルスの感染拡大の予防に向けた取り組みにおいてはいまだ全国的にも予断を許さない状況が続いています。
このような状況の中、視覚に障害のある方々の生活にも大きな影響が出ており、その一つとして「外出時の手引き誘導」においては視覚障害者だけでなく、同行援護従業者や医療従事者、公共交通機関の職員等からも今後のガイドラインを求める声があがっております。
日本歩行訓練士会では、全国で活動している歩行訓練士から情報を集め、訓練士の視点から手引き誘導の方法についてのガイドラインを出すことで、視覚障害者のみならず、様々な場面で支援にあたられている方々の安全、安心に寄与していく所存です。
なお、本ガイドラインの内容は、今後の政府対処方針の変更のほか、新型コロナウイルスの感染の地域における動向や専門家の知見、意見等を踏まえ、必要に応じて適宜改訂を行います。
1.手引き誘導の基本的な考え方
感染予防の対策をしたうえで手引き誘導の方法は「いつも通りに」!
日常生活を安全に過ごすために濃厚接触をせざるを得ない視覚障害者の特性をまず理解したうえで、下記の基本的な考えのもと支援にあたるようにします。
視覚障害者を手引き誘導する際には安全性・安心感の確保が最優先であり、その安全性の確保の中には新型コロナウイルスの感染防止も重要な観点として含まれます。
一方で感染の防止を優先するあまりにつまずきや転落、物への接触等、危険な状態を招くことは避けなければならず、感染防止と危険回避の両立をもって安心感の確保を実現するよう工夫していくことが求められています。
ポイント!
・手引き誘導の方法は原則、肘の上をつかむ、もしくは肩に手を置くなどの方法をとります。
(手引き誘導の方法は、盲導犬使用者も含め視覚障害者の数だけあるので話し合うことが大切です)
・手引き誘導の際に白杖や盲導犬、腕などを引っ張ったり、後ろから押したりするような方法は取らないでください。
・検温、マスクの着用、手洗い、消毒等の配慮は双方が十分に注意するようにします。
・向かい合っての会話は避け、話す際には双方とも同方向を向くようにします。
・視覚障害者が直接ものに手で触れる機会は必要最低限にし、口頭での説明に努めるようにします。
・マスクやフェイスシールドの着用により声が聞こえにくくなりますので、はっきりと確実に伝えるようにします。
・飛沫防止フィルムの設置やベンチの移動、間隔を空ける列など、従来の環境と変化している場合は状況を説明します。
2.場面別手引き誘導の方法
(1)同行援護従業者による手引き誘導
感染予防の対策を十分行った上で、手引き誘導の方法は肘の上をつかんでもらう、もしくは肩に手を置いてもらう方法によることを原則とします。
事前に外出の目的を確認し、視覚障害者と相談しながら、混雑する場所やルートを避けて目的地に向かうように努めます。
同行援護時に従事者がアームカバーを使用する場合は、対象者ごとに交換(アームカバーは洗濯)します。脱ぐ時は静かに端から外側を内側に入れ込むようにし、カバーを扱った後にはよく手を洗います。
携帯用の消毒液を携帯し、こまめに消毒するように心がけるようにします。
※マスク、アームカバーの着用は基本とし、フェイスシールド、ゴーグル、手袋については必須ではありませんが地域の感染状況を考慮し判断をしてください。
(2)公共交通機関の職員による手引き誘導
改札を通過する際には声掛けをしてください。視覚障害者の希望に応じて手引き誘導を行いますが、駅ホーム上や階段などは特に安全確保に努めます。切符の購入などの際は間隔を空けて並ぶことが難しいため、具体的に並ぶ位置を指示する、もしくは窓口での購入対応をお願いします。
(3)医療機関・介護施設の職員による手引き誘導
通常の診察、介護の際には十分に感染予防をしたうえで手引き誘導をします。
視覚障害者に風邪の症状、または感染が疑われる症状が認められる場合には各医療機関、介護施設の感染予防対策をとりながら、いつも通りの手引き誘導をします。
(4)一般市民や通行者による手引き誘導
感染予防の対策として行っている「距離を保って列に並ぶこと」や、「間隔を空けて席に座ること」が難しい場合があります。
その他にも困っている視覚障害者を見かけたら声掛けをし、手引き誘導の方法を視覚障害者に尋ねてください。
ただし、マスクの着用等、感染防止対策を双方が取っていることを原則とします。
また支援者がどのような対策をしているのかを情報として視覚障害者に伝えてください。
3.その他
2メートルの物理的な距離をとるという観点からの工夫として視覚障害者と支援者が直接腕や肩に触れずに白杖、棒、紐、ペットボトル等を介して手引き誘導する方法も提案されていますが、視覚障害者が自ら望む場合を除き、距離をとることでの危険性や心理的不安を考慮することが非常に重要であります。
特に転落の危険性のある駅ホームや段差のある場所では視覚障害者、支援者の双方が慣れている基本姿勢を維持し、不慣れな方法をとらないようにしてください。
視覚障害者にとっては、支援者と物理的な距離をとることで却って安全性を損ない、場合によっては命にかかわる危険にさらされる状況が生じ得ることを理解していただきますようお願いいたします。
注記
視覚障害者の歩行介助の呼称については手引き以外にもガイド等も使われていますが、ここでは『手引き誘導』と表記させていただきます。
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